K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「動名詞」についてご説明します。
前回まで2回にわたって「to不定詞」を解説させていただきました。
その中で、「to不定詞」には<to+動詞の原形>のまとまりが一つの名詞として扱われる名詞的用法という使い方があることをご紹介させていただきましたが、それ以外にも英語には名詞としてはたらくことのできる文法があることをご存知でしょうか?
それが、今日ご紹介する「動名詞」です。
「動名詞」もまた名詞であるため、「to不定詞」の次に学習するのが一般的です。
「動名詞」って動詞なの?名詞なの?となんだかよく分からない印象をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、その基本から解説しますのでぜひ一緒に理解していただければ嬉しいです。
【あわせて読みたい】
Vol.10《to不定詞》のキホン
Vol.11《to不定詞を使ったいろいろな表現》のキホン
「動名詞」という言葉にはどこか不思議な印象を受けますね。動作を表す「動詞」と、物事の名前を表す「名詞」がごちゃ混ぜになっているからです。
そのせいで、「動名詞は動詞として使うの?それとも名詞としても使えるの?」と混乱してしまう方がいらっしゃいますが、実は「動名詞」というのは、動詞の性質を持った「名詞」だということをまず知っておいていただきたいと思います。
動詞の性質を持つ名詞、と言われてもピンとこないかもしれませんが、簡単に言えば「~する(動作)」と「こと(名前)」が合体し、「~すること」という意味の一つの名詞になったもの、ということです。
たとえば、「勉強すること」とか「野球をすること」という具合です。
「~する」という動詞の意味を抱えながら、品詞上は「こと」という名詞としてはたらくもの、それが動名詞です。
ところで「to不定詞」には名詞的用法の他に、形容詞的用法と副詞的用法がありましたが、「動名詞」はそれ自体が「名詞」でしかないので、その点では「to不定詞」より分かりやすいかもしれません。
さて、そんな「動名詞」の形についてですが、「動名詞」は動詞のing形によって表されます。
動詞のing形とは、一言で言えば動詞にingをつけたものです。
ただし、どんな動詞も全て単にingをつければいいというわけではなく、ある一定の作り方に従ってing形をつくることになるため注意が必要です。
以前に当シリーズ『Vol.7 今さら聞けない《進行形》のキホン』の記事でもご紹介しましたが、改めて以下に動詞のing形の作り方を掲載いたしますので参考にしてください。
なお、動名詞には動詞の性質がありますから、場合によっては後ろに目的語を取って「~(目的語を)すること」という一つの大きな意味のまとまりになることもできます。
ではここから例文を用いて「動名詞」の文中での役割を確認していきましょう。
「動名詞」は「名詞」ですから、文中でS・C・Oとして、また前置詞の目的語としてはたらくことができます。
それぞれの文で、「動名詞」(のまとまり)がS・C・Oとして使われていますね。
「名詞」だからこそ、「名詞」がその役割を果たすS・C・Oに動名詞を置くことができるというわけです。
「動名詞」が前置詞の目的語になる、ということも大切です。
前置詞はその目的語として後ろに必ず「名詞」を取りますから、やはりここにも「動名詞」の活躍の場があるというわけです。
「動名詞」をここまで学習された方のほとんどが、「to不定詞の名詞的用法と何が違うの?」という疑問を抱かれます。
どちらも「名詞」として文中で使われるなら、どう使い分ければいいのか疑問に思われるのは当然です。
ひょっとしたら、中学生の頃に「to不定詞(の名詞的用法)と動名詞は入れ替えてもOK」のように教わったという方も中にはいらっしゃるかもしれません。
かく言う私も中学生の頃には “To play soccer is fun.” と “Playing soccer is fun.” は相互に同じ意味で書き換えられる、といったふうに教わったものでした。
最近ではさすがにそれは乱暴だとして見直されるようになってきましたが、それは両者の間に意味やニュアンスの違いがあることを、多くの指導者や学習者が理解するようになってきたからです。
そもそも、似たような文法でも、形が違う以上、意味が同じであるはずがありません。
「to不定詞」の名詞用法も「動名詞」も、形が違う限り全く同じ意味にはなり得ないのです。
動詞のing形である「動名詞」には、進行形のときに用いるing形と同様に「行為を行っている真っ最中」というイメージがあり、これによって「実際に行っている行為」という意味を抱えることになります。
※進行形については当シリーズ『Vol.7 今さら聞けない《進行形》のキホン』をご覧ください。
「動名詞」と進行形のときに使うing形は文法上は別の扱いですが、意味的にはこの「実際的な行為」という点で共通しているところがあり、このことから「動名詞」は「現実行為」や「一般論」に結びつきやすい傾向があります。
※実際のところネイティブの人たちは「どちらも同じing形」くらいにしか考えて(感じて)いない人も多いです。
この発言の裏側には、話者が実際に野球を日ごろから行い、体験的にその楽しさを知っているようなニュアンスがあります。
この発言の裏側には、話者の経験もさることながら、一般論としての貯蓄の重要性が伝わってきます。
こうした「実際的な行為」という意味ニュアンスのために、たとえば “enjoy”「楽しむ」とか “practice”「練習する」など、現実の経験や繰り返し行う行為を伴う動詞の目的語に「動名詞」が使われる傾向が非常に強くあります。
一方、「to不定詞」の場合、toの持つ「向き合うこと」のイメージから「到達」という解釈が生まれ、そのことから「行為に向かっていく」というニュアンスに結びつきます。「動名詞」ほど現実味を感じさせません。
そのため「to不定詞」は「未来志向的」な意味を伴ったり、一般論とは対照的に「個別」の場合について述べるときに使われたりします。
「to不定詞」の名詞的用法と「動名詞」、どちらも「名詞」としての役割を果たすという意味ではあまり違いはありません。
ですがいつでもどちらでもいいというわけでは決してありませんから、機能だけを機械的に覚えるのではなく、しっかりと意味ニュアンスまで意識するようにしてください。
最後に、「動名詞」を使った慣用的な表現をいくつかご紹介します。
数ある表現の中から日常的にもよく使われる重要なものをピックアップしてみましたのでぜひ覚えて使ってみてください。
「~することを楽しみにする」
「~することに慣れている」(状態)
※ get を用いた場合は「~することに慣れる」(動作)
※ deal with ~「~に対応・対処する」
「~することはどうですか?~しませんか?」(提案・誘い)
「~したい気がする」
いかがだったでしょうか。
今回は「動名詞」を取り上げましたが、今日解説させていただいたのはほんの基礎基本の部分だけです。
より発展的な学習内容に進む前に、まずは上述の基礎基本を文法と意味の両面からしっかりと理解できるように、「to不定詞」の名詞的用法とも比較しながら音読などに取り組んでください。
たくさんの例文に慣れ親しむことで「to不定詞」との使い分けなどにもどんどん慣れていきますから、焦らずじっくりと、たくさんの英文に楽しみながら触れ合うことを心がけてくださいね。